「暗闇の中の光」
幼少期から10代に抱えていた深い孤独、居場所のなさ、生きる苦しみ、癒えない心の傷。暗闇の中、そこに射した一つめの光は、10代最後に出会った服づくりだった。
服を作っている時間だけは、自分の中に小さな世界がある気がして没頭できた。自分が生きていく上で大切なことは、すべてものをつくる時間と空間に含まれていて、それはずっと変わらない。
「ずっと変わらない」というのはただそれだけで心を落ち着かせる。ただひたすらに物を作り表現することは本当に強い。全く揺るぎがない。人間にしかできない。
その瞬間、小さな世界だと思っていたところからいつの間にか広い世界に飛んでいた。
それはまぎれもなく、私のこれからの人生にとって最も価値のある営みだと確信した。
物づくりに出会って私はやっと人間らしく生きられるようになったのだ。
そしてもう一つ、闇の中に光をもたらしたものは「言葉」だった。例えば「Heaven helps Those who help themselves. ~天は自から助くる者を助く」。将来が不安で希望が薄れた時でも行動を起こして逃げるなというサミュエルのこの言葉をはじめ、世界中の多くの言葉が、辛い時に私の背中を押してくれ、共に毎日を歩んでくれる。
〈写真・東京・汐留の小さなアトリエ〉