水の記憶

静かな湖面のようにたおやかに。

このスーツは、お客様より受け継いだ正絹の紬着物をもとに、fumikaが丁寧にリメイクした一着です。使用したのは、柔らかな光沢と繊細な「ぼかし染め」が美しい絹の着物。

〈写真・正絹の紬のお着物〉

淡い水色の濃淡が、揺れる水面のように移ろい、まとうたびに表情を変えます。

化学染料では生み出せない、自然のゆらぎと気配がそこに息づいています。ジャケットはアシンメトリーなデザインで、裾の片側にやわらかくフレアを入れました。

〈写真・十和田美術館にて〉

優雅なドレープが歩くたびに風をはらみ、身体の動きに合わせて静かに揺れるシルエット。

シャープな襟元とのコントラストが、凛とした知性と女性らしさを引き立てます。

〈写真・着物リメイクジャケット着用画像〉

素材は、通気性にすぐれた正絹(シルク100%)。しなやかで軽く、肌にすっとなじむ質感は、季節を問わず心地よく、長時間の着用にも快適です。

裏地にも、着物の裏地をそのまま活かすことで、記憶の継承と上質な仕立てを両立させました。

ただ古い布を再利用するのではなく、そこに込められた想いや文化の記憶を受け取りながら、いまの暮らしに寄り添う新たな装いへと再構築する

「知ること」から始まる選択を大切にする、fumikaらしい一着です。