風をはらむスーツ
かつて晴れの日に纏われていた、大島紬のアンサンブル。その布にこめられた記憶と技を、現代のビジネスシーンに寄り添うスーツのかたちへと再構築しました。
使用したのは、奄美大島の自然と職人の手仕事が生んだ大島紬。
〈写真・大島紬を解いた後の様子〉
伝統的な泥染めによる深みのある色合いと、精緻な絣模様が、落ち着きのなかに気品を漂わせます。
〈写真・大島紬ジャケット仮縫いの様子〉
何よりこの布の魅力は、軽さと通気性のよさ。湿気の多い春夏にも快適に過ごせるよう、裏地や縫製にも工夫を凝らし、
着物ならではの涼しさと、洋服としての機能性を両立させています。
〈写真・着物の裏地をそのまま活用〉
ご依頼くださったお客様は、IT業界に携わる方。日々の業務の合間にひらかれる会食やビジネスの席で、知性と誠実さが静かに伝わるような一着を。そんな想いから、このスーツは生まれました。
「風をはらむ」という言葉には、身体を締めつけず、心にもゆとりをもたらすような布と身体のあいだに生まれる静かな余白への願いが込められています。
このスーツは、ただ装うだけの服ではありません。かつて誰かが選び、まとうことで語ってきた文化や想いが、いま、あたらしい時間の中で再び息を吹き返しています。
fumikaは、そんな布に宿る物語を継ぎ、纏いなおす装いを、これからも丁寧に、ひとつひとつかたちにしてまいります。
〈写真・完成した大島紬のセットアップ〉