2025.07.08
読むfumika

⼿を動かすことの意味──機械では⽣まれない美しさ

⼿を動かすことの意味

機械では⽣まれない美しさ

機械がすべてを速く、

均⼀に、正確に仕上げてくれる時代。

けれど私たちは、「完璧」だけでは

満たされないことにどこかで気づいています。

少し歪んだ縫い⽬、

⼿の圧でゆらぐ染めの濃淡、

⼈の⼿からしか⽣まれない、

あたたかく、静かな余⽩。

そこには、機械には決して宿らない、

呼吸のような時間が流れています。

⼿⾜を使うことの中にある、ほんとうの幸福

ガンディはかつて、こう⾔いました。

「機械に依存し、

欲望を次々とかきたてられる社会では、

⼈は物欲の奴隷になる。

⼿⾜を使うことにこそ真の幸せがあり、

そこにこそ健康があるのです。」

fumika は、その⾔葉に深く共感しています。

誰かの⼿が⽷を撚り、

誰かの⼿が布を織り、

誰かの⼿が針を通し、

そうして⼀枚の服が⽣まれる。

⾝体を通して何かをつくるという⾏為は、

⼈間の根源的な“⽣きている”

という実感を取り戻す営みなのです。

時間が縫いこまれた布を、まとう

fumika では、かつて着物として

存在していた布を⽤いて、

あらためて⼀着の服を仕⽴てています。

その布には、もともとの持ち主の記憶、

染められた草⽊の気配、

織られた⼟地の空気が、

静かに縫いこまれています。

そして fumika の職⼈たちが、

また⼀針、⼀針と新しい時間を重ねていく。

それは、ただの縫製ではなく、

⼿から⼿へ、

時代から時代へとバトンを渡す⾏為。

⼿仕事は「思想」そのものである

今、世の中は速さと量を求めています。

「便利で、早くて、安くて、整っているもの」

が賞賛され、少しのゆらぎや不完全さは、

“⽋点”とされることさえある。

けれど私たちは信じています。

ゆらぎの中にこそ、⼈間らしさが宿っていることを。

⼿仕事とは、思想であり、祈りであり、

⽇々の鍛錬です。

fumika の服には、完璧さはないかもしれません。

でも、⽣きた⼿の跡と、物語の余⽩が、

きっとそっと残されています。

纏う⼈の中にある静けさと共鳴するように、

fumika は、これからも⼿でつくることを

⼤切にしていきたいと思います。

機械では測れない、美しさのために。

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fumika|文香 デザイナー 1997年、東京に生まれる。 文化服装学院を卒業後、 アパレル企業にてデザイナーとして 経験を積み、独立。 自身のルーツにある日本の美意識と、 持続可能な衣服のあり方を見つめ直す中で、 着物を再生するブランド 「fumika(文香)」を立ち上げる。 「知性を纏う」 「文化をまとうこと」をテーマに、 草木染め・天然素材 伝統技術を活かしながら、 使い捨てではない装いのかたちを 模索している。 ただ服をつくるのではなく、 布に宿る記憶や時間、 そして命の循環を纏うこと それを、静かで確かな思想として 服に込めている。

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