2025.07.08
読むfumika

肌にのせる⾊、⼼に残るもの。──化学染料と⾃然染料のあいだで

肌にのせる⾊、⼼に残るもの。

化学染料と⾃然染料のあいだで

いつの頃からか、

私たちは“安くて扱いやすいもの”を

選ぶようになりました。

化学染料で染められた鮮やかな⾊、

化学繊維でつくられた服

それらは⼿軽で、効率的で、

そしてどこか“安⼼”に⾒えるものだったのかもしれません。

でも今、ふと⽴ち⽌まって感じる⼈が増えています。

この服は、本当に⾃分の⾝体にやさしいだろうか。
この⾊は、どこから来て、どこへ還るのだろうか。

〈写真・京都、二条城キーファー展〉

 化学染料がもたらすもの

化学染料は、現代の⾐服を⽀える⼤きな柱です。
鮮やかで安定し、量産に向いており、⾊落ちも少ない。

けれど、その便利さの裏で

肌に直接ふれる私たちの体への影響や、

染⾊に携わる⼈々の健康被害も指摘されています。

たとえば、化学染料を扱う現場では、

アレルギーや⽪膚疾患、呼吸器への負担などの

リスクが伴うこともある。

そしてその影響は、「着る⼈」だけでなく、

「つくる⼈」や「⼟や⽔」**にも広がっています。

なぜ⾃然の⾊に惹かれるのか

fumika では、植物染料を⼤切にしています。
それはただ「⾃然だから」ではなく、

“⾃然にしか出せない美しさ”があるからです。

草⽊や花、果⽪や⼟

⾃然のあらゆるものから⾊をいただいた布には、

どれも微妙に異なる⾊合いがあります。

〈写真・浜離宮恩賜公園の桜〉

まったく同じ⾊は、

ひとつとして存在しない。

それは⼈間と同じように、

唯⼀無⼆の存在であり、
だからこそ、その不均質な揺らぎや濃淡に、

私たちは静かに⼼を動かされるのかもしれません。

〈写真・泥で染められた大島紬〉

肌で感じる「違和感」と「調和」

天然素材(絹・⿇・⽊綿・⽺⽑など)は、

草⽊染めと深く調和します。

肌に触れたときに感じる軽さや通気性、

そして呼吸するような着⼼地。

〈写真・大島紬のセットアップ〉

たとえば絹は、冬は暖かく、夏は涼しい

⾃然の理にかなった布です。

けれど今、なぜこの⼼地よさを

「知らない」⼈が多いのか。
それは、育った環境にあるのかもしれません。

たとえば親が選んだ安価な服、

化学繊維中⼼の暮らし。

「それしか知らなかった」からこそ、

違和感にも気づきにくい。
けれど、肌や体は、じつはずっと覚えている。

〈写真・紬のジャケット〉

⾃分の⾝体に合わないものを、

静かに知らせてくれることもあるのです。

知ることが、選ぶことになる

今、化学に囲まれた世界だからこそ、

あらためて⾃然の⾊・天然素材

⼿しごとに惹かれる⼈が増えています。

〈写真・東京・汐留のアトリエにて〉

それはただの“ノスタルジー”ではなく、

「知ること」から始まる選択の⼀歩です。

fumika では、植物染料による染⾊や、

天然素材の⼿ざわりを尊び、
そこに込められた時間や記憶、

そして魂を再び纏いなおすことを⽬指しています。

〈写真・東京・汐留の小さなアトリエ〉

化学が悪で、⾃然が正義という話ではありません。
けれど⼀度、⾃分の体と⼼が何を求めているのか、

静かに⽿を澄ましてみること。
それが、“装うこと”の本質かもしれません。

〈写真・ぼかし染の紬ジャケット〉

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fumika|文香 デザイナー 1997年、東京に生まれる。 文化服装学院を卒業後、 アパレル企業にてデザイナーとして 経験を積み、独立。 自身のルーツにある日本の美意識と、 持続可能な衣服のあり方を見つめ直す中で、 着物を再生するブランド 「fumika(文香)」を立ち上げる。 「知性を纏う」 「文化をまとうこと」をテーマに、 草木染め・天然素材 伝統技術を活かしながら、 使い捨てではない装いのかたちを 模索している。 ただ服をつくるのではなく、 布に宿る記憶や時間、 そして命の循環を纏うこと それを、静かで確かな思想として 服に込めている。

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