2025.07.08
読むfumika

守るのではなく、還ること。──⾃然とともにあるという思想

守るのではなく、還ること。

⾃然とともにあるという思想

環境問題は、もはや「どこか遠くの話」

ではありません。

⼲上がる川、変わってしまった季節、

増え続ける廃棄物。

そのすべてが、

⾃分の⼤切な誰か

を脅かす時代に⼊っています。

私たちはようやく、「何もしないこと」の

深刻さに気づきはじめました。

⾃然を「守る」という傲慢さ

「⾃然を守ろう」

よく⽿にする⾔葉ですが、

どこか違和感が残ります。

⾃然は、私たちが「守る」ような

⼩さなものではありません。

森は、私たちよりも⻑く、

静かに、深く、世界に存在してきた。

海や空は、私たちの想像を超えて広く、

強く、しなやかに巡っている。

私たちができることは、

ただ “その循環の⼀部になること”

「守る」のではなく、「還る」ために、

⽣きるという感覚に、fumika は⽴っています。

⼤宇宙と、⼩さなわたし

⼈間は、⾃然よりも⼩さい存在です。

けれど、⼩さいからこそ、

憧れることができる。

⾃分より⼤きいものに、

美しさや尊さを感じることができる。

染織家・志村ふくみさんは

こう⾔いました。

「⾃然というのは⼀番⼤いなる⽣命体。

だからこそ、それに憧れて、

⾃分は⼩さい、微⼩宇宙だけど、

⼤宇宙の⽣命体と⼀緒になりたいと

常に思って仕事をしていく。

そうして死ねば、それが霊魂の不滅だと思う。」

〈写真・志村さんふくみさんの本〉

fumika の服づくりにも、

同じ願いがあります。

⼩さな布に、⾃然の気配を宿し、

⼿を動かすことで、

⾃然の⼀部に触れているような時間を紡いでいく。

〈写真・ぼかし染の紬ドレス〉

循環の中に、ひと針を。

fumika で使う布の多くは、

もともと着物として

誰かの暮らしを彩っていたもの。

〈写真・お客様に頂いた着物たち〉

それらは草⽊で染められ、

蚕の命から紡がれた⽷からできており、

⾃然の恵みそのものといっていい存在です。

〈写真・大島紬のアンサンブル〉

だからこそ、廃棄ではなく再⽣へ。

⼀度役⽬を終えたものに、

もう⼀度命を吹き込むという選択は、

⾃然の「循環」にそっと寄り添うための、

fumika なりの祈りです。

〈写真・熊本、阿蘇にて〉

まとうことは、⾃然と共に在ること

服を選ぶという⾏為は、

⼩さな⽇常のことのようでいて、

「どんな未来に加担するか」を

選んでいるということでもあります。

⾃然からいただいたものを、

必要なぶんだけ、⼤切に使う。

ものの背景を知り、気配を感じ、まとう。

fumika が⽬指すのは、

そんな“循環のまなざし”を持つ装いです。

〈写真・訪問着のリメイクワンピース〉

⾃然を守るのではなく、

⾃然とともに在る⼈として、

どう死ねるか

どう還っていけるか。

その問いに、静かに応えるような服を、

これからもつくっていきたいと思います。

〈写真・東京・浜離宮恩賜公園にて〉

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fumika|文香 デザイナー 1997年、東京に生まれる。 文化服装学院を卒業後、 アパレル企業にてデザイナーとして 経験を積み、独立。 自身のルーツにある日本の美意識と、 持続可能な衣服のあり方を見つめ直す中で、 着物を再生するブランド 「fumika(文香)」を立ち上げる。 「知性を纏う」 「文化をまとうこと」をテーマに、 草木染め・天然素材 伝統技術を活かしながら、 使い捨てではない装いのかたちを 模索している。 ただ服をつくるのではなく、 布に宿る記憶や時間、 そして命の循環を纏うこと それを、静かで確かな思想として 服に込めている。

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