2025.07.08
読むfumika

つくること、選ぶこと──⼤量⽣産の時代に考える

つくること、選ぶこと

⼤量⽣産の時代に考える。

私たちの経済活動が、

地球に与えてきた影響は計り知れません。

とくにアパレル産業は、その⼤きな⼀因です。

季節ごとに⼤量に⽣み出され、

⼤量に廃棄される⾐服。

その背景で失われているものを、

私たちはどれだけ知っているでしょうか。

⽣産のための「⼈間」

いまの社会では、働く⼈々はときに、

「機械の付属品」のように扱われています。

⼀枚の服をつくるために、

本来は尊いはずの知や技や誇りを奪われ、

ただ効率だけが価値の尺度になっていく。

誰かの健康や寿命、

⼼のありように⽬を向けることなく、

「より速く、より多く」を求める経済。

それは、労働者が⽣産の主体であることを否定し、

⼈間を「⽬的のための⼿段」に

変えてしまう暴⼒にほかなりません。

⼈間は、尊厳をもつ存在です。

誰もが、ただ「使い捨てられる部品」

ではありません。

⼤地と未来への責任

⾃然も同じです。

私たちは⼤地の所有者ではありません。

〈写真・熊本・阿蘇の湖〉

あくまで「⼟地の同居者」として、

ともに在る存在です。

⾃然は、⼈間よりも⾼貴で、

精神的で、物理的です。

無責任な搾取や汚染は、

将来の世代への深刻な「犯罪」であり、

それはいつか、必ず私たち⾃⾝に還ってくる。

よりよい形で⼤地を次の世代に⼿渡すこと。

それが、いま私たちに課せられた責任です。

忘れられていくものたち

⼤量⽣産のスピードの中で、

⼈が抱く愛着や思い⼊れ、

その⼟地に刻まれた歴史や物語は、

あまりにあっけなく壊され、捨てられ、

忘れられていきます。

新品の消費と⽣産ばかりが称賛される社会。

それは、どこか「考えないこと」を

奨励する空気に似ています。

なぜそれが必要なのか、

なぜそれに⼼が動くのかを問わないまま、

ただ⼿を伸ばしてはまた捨てる。

そんな循環が当たり前になっていく。

つくること、選ぶこと

fumika は、欲を張らず、

適量で満⾜するという価値観を⼤切にしています。

⼈がつくるものには、いつも⼼が宿っている。

誰かが⼿間をかけて⽣んだものを、

「ありがたい」と思える感性を失いたくない。

そして、ただ便利なだけの選択ではなく、

「⾃分の買いものが、誰かを幸せにする」

そんな実感を持てる営みを⼤切にしたい。

たとえ考えることはつらくても、

考えることをやめてしまえば、

私たちは⾃分が何を望むのかさえ

⾒失ってしまいます。

だからこそ、

静かに問いかける時間を持ちたいのです。

「なぜ、それを纏うのか。」

その問いが、

またひとつ、

世界に属する⼿がかりになると信じています。

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fumika|文香 デザイナー 1997年、東京に生まれる。 文化服装学院を卒業後、 アパレル企業にてデザイナーとして 経験を積み、独立。 自身のルーツにある日本の美意識と、 持続可能な衣服のあり方を見つめ直す中で、 着物を再生するブランド 「fumika(文香)」を立ち上げる。 「知性を纏う」 「文化をまとうこと」をテーマに、 草木染め・天然素材 伝統技術を活かしながら、 使い捨てではない装いのかたちを 模索している。 ただ服をつくるのではなく、 布に宿る記憶や時間、 そして命の循環を纏うこと それを、静かで確かな思想として 服に込めている。

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