2025.07.08
読むfumika

世界に属するということ──考えること、纏うこと、存在すること。

世界に属するということ

考えること、纏うこと、存在すること。

〈写真・熊本、阿蘇にて〉

いま私たちは、

たくさんのものに囲まれて⽣きています。

便利で速く、刺激にあふれ、

迷う間もなく次がやってくる。

けれどその⼀⽅で、ふと⽴ち⽌まると、

⾃分がこの世界に

「本当に属している」と⾔えるだろうか

そんな疑問が静かに浮かんできます。

存在の「根」が抜け落ちる時代に

忙しさのなかで、

私たちはゆっくり何かを味わう時間を失い、

なぜそれを好きなのか、

なぜ悲しいのか、

なぜ感動したのかすら

⾔葉にすることなく

通り過ぎていく⽇々を過ごしています。

〈写真・熊本、阿蘇にて〉

「考えること」は

重たくて、つらい。

けれど考えることを⼿放すと、

私たちは、

⾃分の感情すらわからなくなってしまう。

怒ったり笑ったりはできても、

“なぜそう感じたか”を⾔葉にできないまま、

ただの反応として⽇々を流れていく。

⾃分の存在が社会に

必要とされているという実感がないとき、

⼈はどこか世界から切り離されたように感じます。

⾃分が世界の中で「無⽤なもの」

になったかのような感覚。

まるで廃棄された布のように。

なぜ、考えるのか。

考えるということは、

「わたし」が世界の中でどこに⽴ち、

どのように⽣きたいのかを⾒つけることです。

それは単なる知的な作業ではなく、

「⾃分の輪郭を取り戻す」こと。

何を使って、どうつくるのか。

つくるものはどこへ⾏き、

どれだけ残るのか。

数年後、その選択がどう響いていくのか

そうした問いを持つことが、

私たちの⽣き⽅を静かに変えていきます。

わたしを取り戻す、⼩さな営み。

fumika は、考えることを⼤切にしています。

ただ服をつくるのではなく、

「どうしてそれをまとうのか」を

静かに問う⾐服でありたいのです。

〈写真・ぼかしの紬のジャケット〉

忘れられた布に

もう⼀度、光をあてること。

誰かの⼿で⽣まれた技と美を、

もう⼀度、暮らしに取り戻すこと。

それは、世界に属するという感覚を、

⼀枚の服をとおして、

⾃分の⼿のひらに取り戻す⾏為です。

〈写真・打掛を解いた様子〉

速さではなく、ていねいさを。

消費ではなく、対話を。

反応ではなく、意味を。

〈写真・東京・汐留の小さなアトリエ〉

fumika は、「まとうこと」をとおして、

あなたが再び世界に

根をおろせる場所でありたいと願っています。

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fumika|文香 デザイナー 1997年、東京に生まれる。 文化服装学院を卒業後、 アパレル企業にてデザイナーとして 経験を積み、独立。 自身のルーツにある日本の美意識と、 持続可能な衣服のあり方を見つめ直す中で、 着物を再生するブランド 「fumika(文香)」を立ち上げる。 「知性を纏う」 「文化をまとうこと」をテーマに、 草木染め・天然素材 伝統技術を活かしながら、 使い捨てではない装いのかたちを 模索している。 ただ服をつくるのではなく、 布に宿る記憶や時間、 そして命の循環を纏うこと それを、静かで確かな思想として 服に込めている。

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