静けさと誇りの村へ
ブルネロ・クチネリの哲学にふれて
今年の春、イタリア中部
ウンブリア州にある小さな村、
ソロメオを訪ねました。
そこは、私が長年尊敬してきた
ブルネロ・クチネリの会社の本社がある場所。
彼の哲学に、ずっと心惹かれてきた私は、
いとこを連れて、この目でその世界を確かめに行きました。
〈ブルネロクチネリソロメオ店〉
ソロメオは、ただの「会社のある場所」ではなく、
人間の尊厳と自然との共生を軸に築かれた、
ひとつの理想郷のような村です。
緑に抱かれた丘の上に、劇場があり、
無償の職人学校があり、
仕事の合間に静かに腰を下ろせる
美しい石畳の広場がありました。
そこには、働く人の暮らしと美意識が、
無理なく共存していました。
クチネリ氏は言います。
「人間の尊厳のために、美を取り戻すこと」
「スローな営みにこそ、本当の知性と誇りがある」と。
その言葉が、fumikaの目指している未来と
静かに重なります。
服づくりとは、
誰かの命を削ってつくるものであってはならない。
生産者と着る人、自然と暮らし
そのすべてが尊重され、
やさしい循環の中にある服を、
私も作り続けていきたい。
ソロメオで過ごした数時間は、
まるで時間が止まったかのような静けさの中にありました。
けれどその静けさの底には、揺るぎない信念と、
時代を変えるような意思の光が宿っていたように感じます。
この旅の記憶を、fumikaの服に、
少しずつ織り込んでいけたらと思っています。
〈訪問着リメイクワンピースを着て〉